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【技術書レビュー/書評/要約】はじめてのLinuxサーバー構築入門 2025【日経Linux 】

はじめてのLinuxサーバー構築入門2025 (日経BPパソコンベストムック)

タイトル はじめてのLinuxサーバー構築入門 2025
著者 日経Linux
出版社 日経BP
発売日 2024年10月

『はじめてのLinuxサーバー構築入門 2025』レビュー:現代的ニーズに応える実践的ガイド

本書『はじめてのLinuxサーバー構築入門 2025』は、タイトルこそ「入門」と銘打たれているものの、その内容は現代のサーバー構築における必須知識と実践的なノウハウを網羅しており、経験豊富なエンジニアにとっても十分に価値のある一冊だと感じました。Ubuntu 24.04 LTS をベースにしている点も、長期的な安定運用を考慮する上で適切な選択です。

1. サーバー構築の基礎と応用:LAN内サーバーからクラウド連携まで

本書の第1章は、Ubuntu Server 24.04 LTS のインストールから始まり、LAN内で必要となる基本的なサーバー構築を網羅しています。DHCPサーバー、DNSサーバー、ファイルサーバー、Webサーバーなど、現代のネットワーク環境において不可欠なサーバー群を、具体的な手順と設定例とともに解説しており、初学者でも迷うことなく構築を進められるでしょう。

特筆すべきは、各サーバーの構築において、セキュリティ対策にもしっかりと触れられている点です。単に動かすだけでなく、ファイアウォールの設定やアクセス制限、認証の強化など、運用を見据えた具体的な対策が盛り込まれているため、実践的な知識を習得できます。

第2章では、省電力サーバー構築に焦点が当てられています。近年、サーバーの電力消費は無視できない問題となっており、本書では、ハードウェアの選定からOSの設定、アプリケーションの最適化まで、省電力化のための様々なテクニックを紹介しています。特に、CPUの Governor 設定や、不要なサービスの停止など、OSレベルでの最適化は、見落としがちですが非常に効果的な手段です。

2. クラウド連携と仮想化技術:現代的サーバー構築のキーポイント

第3章では、ブログサーバー「WordPress」の構築を「AWS」(Amazon Web Services)に、IoTデータの収集を「Microsoft Azure」に任せる方法を紹介しています。オンプレミス環境だけでなく、クラウド環境との連携も視野に入れた構成は、現代のサーバー構築において必須の知識です。

AWS や Azure の基本的なサービス、インスタンスの起動、ネットワーク設定など、クラウド環境でのサーバー構築に必要な知識が丁寧に解説されています。また、WordPress のようなアプリケーションをクラウド上で運用する際の注意点や、IoT データ収集基盤の構築方法など、具体的なユースケースに基づいた解説は非常に参考になります。

第4章では、各種仮想化技術の基本的な仕組みから、VirtualBoxやDockerなど主要な仮想化ソフト&コンテナー管理ツールの導入方法、便利な活用方法を紹介しています。仮想化技術は、サーバーリソースの有効活用や、開発環境の構築において欠かせない技術です。本書では、VirtualBox のようなハイパーバイザー型仮想化と、Docker のようなコンテナー型仮想化の違いを明確に解説し、それぞれのメリットとデメリットを比較しています。

Docker に関しては、Dockerfile の書き方、イメージの作成、コンテナーの実行など、基本的な操作から、Docker Compose を用いた複数コンテナーの連携、Docker Hub を用いたイメージの共有など、より高度な内容まで網羅されています。

3. ポジティブな点とネガティブな点:今後のアップデートに期待

本書全体を通して、Ubuntu Server 24.04 LTS をベースにしている点、具体的な手順と設定例が豊富に盛り込まれている点、セキュリティ対策や省電力化など、運用を見据えた実践的な知識が習得できる点が高く評価できます。また、クラウド連携や仮想化技術など、現代的なサーバー構築におけるキーポイントが網羅されている点も、本書の大きな魅力です。

一方、改善点としては、ネットワーク構成に関する説明がやや不足している点が挙げられます。例えば、VLAN の設定や、ルーティングの設定など、より複雑なネットワーク構成を扱う場合、本書だけでは知識が不足する可能性があります。

また、パフォーマンスチューニングに関する記述も、もう少し踏み込んだ内容を期待したいところです。例えば、Web サーバーであれば、キャッシュの設定や、HTTP/2 の有効化など、より具体的なチューニング方法を紹介することで、本書の価値はさらに高まるでしょう。

4. まとめ:現代のサーバー構築に不可欠な知識とノウハウを網羅

『はじめてのLinuxサーバー構築入門 2025』は、Linuxサーバーの構築や運用を手掛けたいエンジニアにとって、必携の一冊と言えるでしょう。Ubuntu 24.04 LTS をベースに、基本的なサーバー構築から、クラウド連携、仮想化技術まで、現代のサーバー構築に不可欠な知識とノウハウが網羅されています。

本書を通じて、サーバー構築の基礎を固め、実践的なスキルを身につけることで、自信を持ってサーバー構築プロジェクトに臨むことができるでしょう。経験豊富なエンジニアにとっても、知識の再確認や、最新技術のキャッチアップに役立つはずです。

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