タイトル | Excelよくばり入門 実務も資格もぜんぶやりたい! MOSの事前学習にも最適! |
著者 | 上野景子 |
出版社 | インプレス |
発売日 | 2025年04月 |
Excelよくばり入門 実務も資格もぜんぶやりたい! MOSの事前学習にも最適! レビュー
本書「Excelよくばり入門 実務も資格もぜんぶやりたい! MOSの事前学習にも最適!」は、そのタイトル通り、Excel初心者からMOS試験対策まで幅広くカバーすることを謳っている。34歳、情報系学部卒で長年プログラミングに携わってきた私にとって、Excelは日常業務におけるツールというよりも、むしろデータ処理や自動化のための素材と言える。従って、この書籍に対するアプローチは、一般的なユーザーとは異なる視点となるだろう。
充実した基礎解説と実践的な応用例
本書の大きな強みは、基礎的な操作から高度な機能まで、網羅的に解説している点にある。特に、数式や関数の解説は、初学者にとって理解しづらい箇所も多い中、図解を効果的に用いることで、視覚的に理解を促進している。VLOOKUP関数やINDEX関数、MATCH関数といった、データ検索・抽出において不可欠な関数の説明は、具体例を豊富に用いており、単なる構文の説明にとどまらず、実務での活用イメージを掴むことができる。さらに、マクロやVBAの基礎についても触れられており、Excelの自動化に興味を持つユーザーにとって、入門として最適な内容となっている。
実践的な応用例も豊富に用意されている。例えば、顧客管理、売上管理、在庫管理といった、ビジネスシーンで頻繁に用いられる事例を基にした解説は、単なる演習問題としてではなく、実際に業務で活用できるスキルを身につける上で非常に役立つ。特に、複数のシートを参照しながら複雑な計算を行う例題は、Excelの真価が発揮される場面であり、本書ではその過程を丁寧に解説している点が評価できる。
動画解説の有効性と限界
本書は解説動画付きという点も特徴の一つである。動画を用いることで、静止画だけでは理解しづらい操作手順を視覚的に確認できるのは大きなメリットだ。特に、マクロの記録やVBAのコード実行といった、実際に操作しながら理解する必要がある場面では、動画解説が非常に有効に機能する。しかし、動画解説はあくまで補助的なものであり、テキストによる詳細な解説が不足している部分も見受けられた。例えば、エラー処理や例外処理といった、より高度なプログラミング的側面については、動画だけでは不十分であり、テキストによる補足説明が不可欠だと感じた。
MOS試験対策としての有効性
MOS試験対策としての有効性については、合格ラインに到達できるだけの十分な内容が含まれていると言える。試験で出題される頻度の高い機能や操作については、丁寧な解説と実践問題が用意されており、効果的な学習が可能だ。ただし、試験対策としては、過去問演習や模擬試験といった、実践的なトレーニングをさらに追加する必要があるだろう。本書はあくまで基礎固めのための教材として位置付けるのが適切である。
惜しい点:高度なテクニックの不足
本書は「ワンランク上のテクニック」を謳っているが、高度なユーザーが求めるような、高度なデータ分析や、Power Queryを用いたデータクレンジング、Power Pivotを用いたデータモデリングといった内容には触れられていない。私のように、プログラミングスキルを持つユーザーにとっては、これらの機能こそがExcelの真の価値であり、本書ではその点がやや物足りなく感じた。例えば、Power Queryを用いたデータ変換や、DAXを用いたデータ分析の解説があれば、本書の価値は大きく向上しただろう。
まとめ:初心者から中級者までを網羅する良書
全体として、本書はExcel初心者から中級者までを対象とした、非常にバランスの取れた良書であると言える。基礎的な操作から実践的な応用例、MOS試験対策まで、幅広いニーズに対応している。特に、Excelを業務で活用したいと考えているユーザーにとって、非常に役立つ内容となっている。ただし、高度なテクニックや、プログラミング的な知識を期待するユーザーにとっては、物足りなさを感じる可能性もある。 動画解説の利便性と、テキスト解説の分かりやすさのバランスは良く取れているものの、より高度な内容を求めるユーザーには、さらなる学習が必要となるだろう。 初心者から中級者までを対象とした、入門書としては非常に高い完成度を誇っているため、Excelの学習を始める、あるいはスキルアップを図りたいと考えている方々に強くおすすめできる。 特に、MOS試験の受験を考えている方には、必携の一冊となるだろう。