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【技術書レビュー/書評/要約】イチからはじめるCanvaビジネス活用入門【山本和泉】

イチからはじめるCanvaビジネス活用入門

タイトル イチからはじめるCanvaビジネス活用入門
著者 山本和泉 / あしたの仕事力研究所
出版社 日経BP
発売日 2024年12月

イチからはじめるCanvaビジネス活用入門:熟練プログラマの視点からのレビュー

この書籍「イチからはじめるCanvaビジネス活用入門」は、Canvaの操作方法を網羅的に解説した入門書として、一定の完成度を誇っている。しかし、高度なデザインスキルを有する者、あるいはプログラミング経験を積んだ者からすれば、物足りなさを感じる部分も存在する。本書の真価は、Canvaの機能を初めて触れるユーザー、特にデザイン経験の少ないビジネスパーソンにあると結論づけた。

Canvaの基本操作:初心者向けに丁寧に解説されているものの…

本書はCanvaの基本操作を、初心者にも分かりやすいステップ・バイ・ステップで解説している。テンプレートや素材の活用方法、画像編集の基本、テキストの装飾など、Canvaを初めて使用するユーザーにとって重要な要素を網羅している点は評価できる。特に、練習用の素材テンプレートと素材ファイルを提供している点は、実践的な学習を支援しており、学習効果を高める上で非常に有効である。各章の構成も論理的で、スムーズにCanvaの機能を理解できるようになっている。 ただし、高度な画像編集機能や、CSSのような高度なスタイル設定に関する説明は限定的である。例えば、高度なレイヤー操作や、オブジェクトの複雑な配置、アニメーション効果の活用などについては、より詳細な解説を期待したい。

ビジネスシーンでの活用事例:実践的なノウハウが不足している

本書は、SNSバナー、チラシ、名刺などのビジネスシーンでCanvaを活用するための具体的な方法を解説している。しかし、これらの事例は比較的シンプルで、高度なデザインスキルやマーケティングの知識を必要とするような複雑なケースは扱われていない。例えば、A/Bテストに基づいたバナーデザインの最適化、ターゲット層に合わせたデザインの調整、ブランドガイドラインへの準拠など、ビジネスシーンにおいて重要な要素については、より深い議論が求められる。さらに、Canva Proの機能を活用した高度なワークフローや、チームでのCanva利用についても、より踏み込んだ解説が欲しかった。

デザインテクニック:基本的なテクニックの羅列に留まる

本書では、デザインテクニックについても触れられているが、基本的なテクニックの羅列に留まっている点が残念である。例えば、色の組み合わせ、フォントの選択、レイアウトの基本原則など、デザインの基本的な知識は網羅されているものの、より高度なデザイン理論や、デザイン思考のプロセスについてはほとんど触れられていない。熟練したデザイナーであれば、本書に記載されている内容だけでは満足できないだろう。デザインの原則である「黄金比」や「グリットシステム」といった専門用語も、説明不足と言える。

入稿データの作り方:具体的なフォーマットへの言及が不足

本書では、Canvaで作成したデータを印刷会社などに提出するための入稿データの作り方についても解説されている。しかし、具体的なフォーマットや解像度に関する説明が不足している点が懸念される。印刷会社によって要求されるフォーマットは異なるため、本書ではより具体的な例を示すことで、ユーザーの混乱を減らす必要がある。また、カラーモード(CMYK/RGB)の違いについても、より詳細な解説が必要となる。特に、画像の解像度に関して、印刷用途とWeb用途の違いを明確に説明し、適切な解像度を選択する方法を具体的に示すべきだった。

全体的な評価:初心者向けには最適な入門書

全体的に見て、本書はCanvaの初心者にとって、非常に分かりやすく、実践的な入門書となっている。ステップバイステップの解説、練習用素材の提供、ビジネスシーンでの活用例など、ユーザーフレンドリーな設計が施されており、Canvaの基本的な操作を習得するには最適な一冊と言える。しかし、高度なデザインスキルやプログラミング経験を持つユーザーにとっては、内容がやや物足りない可能性がある。Canvaの高度な機能や、デザイン理論、ビジネスにおける高度な活用方法を期待するユーザーには、本書だけでは不十分であり、より専門性の高い書籍やオンラインリソースを参照する必要があるだろう。

改善点に関する提案

  • より高度なデザインテクニックや、デザイン理論に関する章を追加する。
  • Canva Proの機能をより詳細に解説する。
  • ビジネスシーンにおける高度な活用事例(例えば、A/Bテスト、パーソナライズドデザインなど)を追加する。
  • 入稿データに関する情報を、より詳細かつ具体的(フォーマット、解像度、カラーモードなど)にする。
  • 各章末に、より高度な学習内容へのリンクを追加する。

本書は、Canva初心者にとって、良質な入門書であることは間違いない。しかし、より高度な知識やスキルを求めるユーザーには、追加の学習が必要となるだろう。 Canvaをビジネスで活用したいと考えている初心者には、強くおすすめできる一冊である。

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