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【技術書レビュー/書評/要約】日本でいちばんわかりやすいプログラミングのドリル 知識ゼロからはじめる「きほんのき」【高橋雅明 】

日本でいちばんわかりやすいプログラミングのドリル

タイトル 日本でいちばんわかりやすいプログラミングのドリル 知識ゼロからはじめる「きほんのき」
著者 高橋雅明
出版社 日本能率協会マネジメントセンター
発売日 2018年03月

日本で一番わかりやすいプログラミングのドリル 知識ゼロからはじめる「きほんのき」:詳細レビュー

本書「日本でいちばんわかりやすいプログラミングのドリル 知識ゼロからはじめる「きほんのき」」は、そのタイトル通り、プログラミングの基礎を、問題演習を通して学ぶことを目的とした書籍である。 「知識ゼロ」を謳っている通り、プログラミング経験のない初学者をターゲットにしている点において、その狙いは明確だ。しかしながら、本書の真価は、単なる初学者向けテキストにとどまらない、ある種の潜在能力を秘めている点にあると私は考える。

独自の反復学習メソッド:効果と限界

本書は、100問以上の「問」「答」形式で構成されており、反復練習によってプログラミングの基礎概念を定着させることを目指している。この反復学習メソッドは、特に初学者にとって非常に有効である。プログラミング学習の初期段階では、概念理解よりも実践を通して直感的に理解を深めることが重要であり、本書の構成はその点を巧みに突いている。 各問題は簡潔で、要点を押さえた構成になっており、初心者でも取り組みやすいだろう。 さらに、解答も丁寧に解説されているため、単なる答え合わせではなく、理解を深めるための学習ツールとして機能している。

しかし、この反復学習メソッドには限界もある。本書は、あくまで「基礎の基礎」に焦点を当てているため、高度なアルゴリズムやデータ構造といった、より実践的なプログラミングスキルを身につけるためには不十分である。例えば、オブジェクト指向プログラミングの概念は、本書では簡潔にしか触れられていない。実践的なアプリケーション開発に必要な設計思想や、エラーハンドリング、テスト駆動開発といった重要な概念についても、ほとんど言及されていない。

強み:実践的なコード例と丁寧な解説

本書の大きな強みは、各問題において、具体的なコード例を示している点にある。単なる概念の説明にとどまらず、実際に動作するコードを通して理解を深められるのは、初心者にとって非常に大きなメリットとなる。さらに、解答の解説も非常に丁寧で、なぜそのコードが正しいのか、どのような考え方で問題を解くべきなのかが、分かりやすく説明されている。これは、単に「答え」を提示するだけの書籍とは大きく異なる点であり、本書の価値を高めている。

弱点:言語依存性の高さと実践への橋渡し不足

本書では、具体的なプログラミング言語を指定して解説されている。これは、特定の言語に限定されるため、他の言語を学習する場合には、その分学習コストがかかることを意味する。ある程度のプログラミング言語の基礎を身につけてから、他の言語への移行をスムーズに行うための汎用的な知識を学ぶためには、本書だけでは不十分であると言えるだろう。

また、本書で学べる内容はあくまでも基礎的な部分に限定されているため、実践的なアプリケーション開発に直結するような内容が不足している。例えば、データベースとの連携、API 呼び出し、並列処理など、実際の開発現場で頻繁に遭遇する課題については、ほとんど触れられていない。 そのため、本書だけでプログラミングスキルを完璧に習得することは難しいだろう。本書はあくまで第一歩、足掛かりとして位置付けるべきである。

対象読者と今後の発展

本書は、プログラミングを全く初めて学ぶ人、あるいは、プログラミングの基礎を再確認したい人にとって最適な書籍である。特に、独学でプログラミングを学習したいと考えている初心者にとっては、その分かりやすい解説と豊富な練習問題によって、学習のモチベーションを維持しやすいだろう。しかし、既に基礎的なプログラミング経験がある人にとっては、内容がやや初歩的すぎる可能性がある。

本書で得られた基礎知識をさらに発展させるためには、より高度なプログラミング技術を学ぶための書籍やオンラインコースを活用する必要がある。 例えば、アルゴリズムとデータ構造、デザインパターン、フレームワークの使い方などを学ぶことで、より実践的なプログラミングスキルを習得することができる。 本書は、そのための第一歩を踏み出すための、優れた入門書と言えるだろう。

まとめ:プログラミング学習の第一歩として最適な一冊

全体として、「日本でいちばんわかりやすいプログラミングのドリル」は、プログラミング初心者にとって、非常に分かりやすく、学習しやすい一冊である。反復練習を通して基礎を固めるという点において、その教育効果は高いと評価できる。しかし、高度なスキルを習得するためには、本書だけでは不十分であり、他の学習資源と組み合わせる必要がある。 本書は、プログラミングの世界への入り口を開くための、最適な鍵となるだろう。 しかし、この鍵を使って、プログラミングの奥深い世界へと進んでいくためには、自身の努力と継続的な学習が不可欠であることを忘れてはならない。 本書は、その最初の冒険への、素晴らしい出発点となるだろう。

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